ロシアの歌

ここんところコレばっかり聴いてる。
曲名_Igor Stravinsky 'Chanson Rusee'
演奏者_Reinbert de Leeuw and Vera Beths
イゴール・ストラヴィンスキーの小品「ロシアの唄」で、81年に池袋の西武美術館入り口左にあった「アール・ヴィヴァン」で流れていたのを聴いて即買ったレコード。その端正で凛々しい音に瞬間的に魅了された。4分程の曲がピアノとバイオリンで演奏されているのだが、同じ曲がバイオリンのミュート違いで8曲連なっている、という凄いレコードだ。
オランダのBVハウストというレーベルのLP盤。CD化されたのが随分後になってからで、今でも入手しにくい。調べてみると、今まで知らなかった事が次々とわかってきた。
オランダのサイトには、配信で入手出来るし、ピアニストのデ・レーウとの演奏写真(モノクロ)もあった。

演奏を記録したレコードというものが如何に有り難いものかと思い知ったし、このレコードはボクが知る限り音楽の奇跡の10枚に入る。

ストラヴィンスキー、ロシア亡命者の叶わない故郷への切望が浮き出ては消えて行く儚くも切ないメロディーになって響く。最後の展開で「絶望」を表している様に感じるし、諦めない気持ちも複雑に混在している。演奏者もひとつの気持ちでだけでない8通りの「思い」になっているのだと思う。

これを聴くと肉体と精神とは別の何かが覚醒するのがわかる。先日「フランシス・ベーコンを踊る田中民」をNHKで見たが、そこにあったのも同じかも、です。「真の芸術とは形がないものだ」という一説が思い浮かんだ。絵画や彫刻も「形」ではなく、真にそこに生まれた何かが感じ取れなくなった時僕らはただの肉体になるのか。
ベーコンの遺言という「ボクが死んだらゴミとして袋に入れて捨てて下さい。」は強烈な一発だ。