フレッド・フリスさんというギタリスト

フリス氏はただのギタリストではない。普通に弾かない。弾いても凄いんだが、もっと凄いから普通じゃない。誰もやらない事を先にやっているだけ。先にやることで現代の一般とは合わないから評価は別になってしまう。普通に弾かない人には弾けない人もいる。アート・リンゼイの事だけど、彼は弾けないギタリストで一番カッコいい。エアギターとは全く違う。挑戦した人だ。
話を戻すと、「普通に弾かない」であるが、ボクが最初に見たライブでは、某大学の講義室に箱が置いてあり、その上にギターが2台置かれている。布が間に敷かれていたと思う。学生が部屋で使っている様な小さなアンプが数台。マイクスタンドもあった。ギターを囲む台にはいろいろなモノが置かれている。鎖、ピーナッツ、拡声器、何製か不明な紐、などなど。
音は弦を指で弾く、ではなく、いろいろなモノ達が弦にぶつかる音だった。「日本人が奏でる即興音楽」と決定的に違って面白いのは、「リズムありき」「リズム命」の中に散りばめられた「音」であって、「何となくの散漫な音=今流行の即興音楽の最先端っぽい音楽」ではなかったから、よくわからないし、初めて聴いた音だけど、何か気持ちのよい「不思議さ」に充満されているのがわかった。
来場している人の多くは、ブライアン・イーノの名作に参加したギタリスト、ビル・ラズウェル参加のマサカーのギタリストってなもんだけど、彼の人間的な魅力も大きな期待だったと思う。
ライブは、いわゆる演奏会というより、「こんな音でも音楽になる瞬間がわかっている人が集まってマニアックに共感しちゃおうか」的なのが半分、もう半分は「売れている音楽ばかり聴いてると馬鹿になっちゃうよ」的な官能的でカッコいい曲もやっちゃう、という1時間半だった。
この時間の長さ(1時間半)もこれがエンターテインメントの範疇が半分入っていることがわかる。これが6時間以上だと、アートか、アジテーションになっちゃうよなあ。
今年、マサカーで来日していたのには気づかず。ああ、フリスさん。アナタはいろいろな才能の発掘者としても卓越していたなあ、ってまだ現役ばりばりでスンけど。生きている間に褒めたいんですよ。