人間性の場所

昨年逝去した石岡瑛子さんがアカデミー賞にノミネート。3度目だったか。以前にも受賞もしていてグラミー賞も獲得していて、石岡ファミリーの末端としてはこれほど嬉しいことはない。石岡さんが亡くなった時にご自宅からボク等にも丁寧に封書のお知らせを頂いた。そこには『2010年に癌を告知されて、治療を続けながら、3本の仕事を最後迄やりたい、を貫いた。」と。その3本とはブローウェイミュージカル「スパイダーマン」(音楽はU2)、タルサム監督映画「神々との戦い」「ミラーミラー」(白雪姫作品。ジュリア・ロバーツ主演)の3本。今回のノミネートは「ミラーミラー」。
ボクがこの業界に入った時のアートディレクターの中のスター中のスターだったのが石岡サンであった。若い優秀なADは皆石岡サンを目指した。ボクもその一人で、ではなかったが、ボクのボス(かの有名なS氏)は普段滅多に人をあからさまに褒めないのだが、石岡サンだけは遠慮なく崇拝していた。とにかく、目立つ仕事、凄い仕事、革新的な仕事はほぼ石岡さんの仕事だった。
いつだったか、西麻布の飲み屋で石岡姉妹とも一緒だった時。「最後の最後は人間性だよね」みたいな話。この話が最近になって凄く鮮明に目の前に出て来た。
仕事人は仕事が最優先。それこそ「ヘタな人間性を無視してもとにかく仕事に向き合う事が一番大事。それをかいくぐって最後の最後にぶち当たるのが、この「人間性」何だよねえ、という話。最初に人間性がある、という話ではない、と。
「上手い人」は沢山いて、その中にさらに凄い人がいて、その頂点の中に更に上を目指す人の中に「人間性」があるやもしれない、という「境地」。
それと同時に思うのは、「仕事自体が人間性である。」ということ。
石岡サンの顔は、仕事と同じくらい「人間としての神秘性」に溢れている。今は上手く言い表せないけど。
http://www.eikoishioka.com/

1.21は石岡サンの命日です。