今年のENO

今年一番の音楽的事件だったのは、Brian EnoがPeter Chilversと組んでi-padアプリ「Scape」をこの秋に発表したのが一番の衝撃だったなあ。既発表のi-phoneアプリ作品「Bloom」「Air」「Trope」も大好きなアプリだった。音楽の不思議さと楽しさが詰まってたし、美しかった。今回の画面サイズを発揮した新作も凄いです。
音楽そのものを作れる。つまりEnoがデビュー以来貫いて来た「敢えて音楽を作らない」=「非音楽」=「誰でも音楽を奏でられる」の最たる形と思う。ここまで来たかって作品だ。創作のレベルが普通の「音楽家」と違う。本当に凄い人は「音楽は難しい」とか言わないんだなあ。音楽を演奏する人と聴く人との間に「溝」を作らないんだなあ。
http://amass.jp/11429
端末を持たないと多分何が何だかわからない。友人に説明しても意味不明な様子。いわゆる演奏会もないし(多分)、ヒットチャートにも上らないからなあ。
ボクが最初にENOを知ったのは、ROXY MUSICのデビューシングル「バージニア・プレイン」のプロモビデオだ。楽器の演奏ではなく、テープレコーダーの前で踊っている派手なメイクの彫刻の様なキレイなインテリ。それまでの音楽家のイメージとは違う科学者みたいな雰囲気。その妙な感じに瞬間的に信者になった。それから彼が出す物は全て追いかけた。もう40年近いなあ。雑誌のインタビューも映像作品もだ。最近はサイトから直販で買えるので、前よりグッと近くにいる感じ。お知らせメールも来ちゃう。
ENOの最大の魅力は、予想を超えてボクを見知らぬ「どこか」に連れて行ってくれる事だ。そういう巨大な名作を沢山生んで来た20世紀音楽の巨人と思う。以下名作の断片を列挙。
Robert Frippとのコラボ「Evening Star」、「Obscure」シリーズ、David Bowieとのコラボ「Low」「Heroes」、「Ambient」シリーズ、ドイツのClusterとのコラボ、Talking Heads作品「Remain the light」David Byrneとのコラボ「My Life in the bush of ghosts」、Jon Hasselとのコラボ作品、U2プロデュース作品「Unforgettable Fire」、Jamesの作品群、ソロアルバムは何枚あるかは不明な位。不世出のプロデューサーDaniel Lanoisをこの世に出したのもENOだ。
とにかく多作。イッパイ作る人は信用出来る。スランプなしで40年だ。
コラボが多いというより、ENOの功績を正確になぞると、「サンプリングという音楽概念」「コラボレーション」「アンビエント」を確立させたことだろうなあ。エジソンみたいな人だ。「楽器の演奏力にこだわらなかった」事がコロンブス級な大発明だった。