ゲルニカ再発見

音楽雑誌「ストレンジデイズ」でゲルニカの特集をやっていた。女優であり歌い手の戸川純・作曲家で編曲家で元8 1/2ハルメンズ上野耕路・画家の太田螢一のアートなバンド。今聴くと、上野さんの編曲の素晴らしさに圧倒される。あの伊福部昭の弟子である上野さんは邦楽のど真ん中を行きながら本人はかなり遠くから眺めているように思う。一般的な評価はその逆。
1981年の渋谷のライブハウス「クロコダイル」で「ゲルニカ」のライブを友人のカメラマンに紹介されて見に行った。(実は撮影記録有)その日は太田さん加入前だったのか不在で、上野さんとはその日に会えたが、凄い人見知りで撮影もしたことがある友人にもあまりペラペラと喋る感じはなかった。印象としては皇族のような佇まい。
アルバムの再評価は当然として当時のインパクトを知る人が少ないのは残念だ。業界の一部では相当な盛り上がりであったが、大まかな方向性としての「一歩間違えば変態」「回顧趣味」「コミュニスト的偏執狂」というきわどいキーワードが先行し、音楽の本筋とはややズレた感じを持って広まっていたのは非常に勿体なかった。間違ってはいないが、もっと演劇に近い楽しい音楽なのだ。音楽でなければ醸し出されない雰囲気があってワクワクする。想像の世界なのだと思う。ここで伊福部音楽との接点があるように思う。
上野さんは当時演劇やダンスのレビューの音楽もやっていた、と話していた。今や絶滅寸前の「場末の雰囲気が好き」というのも音楽の可能性の話だと思う。出来ればレコード見ながらCD聴いて欲しい。
ジャネット・クライン」というシンガーのライブを見たけど、彼女は19世紀のアメリカを表現していて、インタビューでも喋り方が昔の英語でまるで「ベティーブーブ」みたいであった。彼女の先駆がこの「ゲルニカ」であろうか。