シンプル

先日、いや昨日か?いやもっと前か?ジェットラグみたいな気分。いつのことだかわからない。同時に映画を2本見ながら、本の資料を見ながら雑誌のデザインを作業している時に電話が。いつもはやや険しい声がやさしい声になって聞こえてきた。一瞬誰だかわからないまま話していた。こちらとしては無理からんのだが、相手は勝手知れず。ハッキリ聞こえたのは「某イベントのシンボルマークを作ってくれ」と言う声。文字に関しては、グラフィックの要素の中では一番反応するかも知れない。電話口でいろいろ説明してくれたが、一向に内容がつかめず、2本の映画はエンディングになり、雑誌のレイアウトは差し換えの大盛りで頭は混乱している。これは通常の人ならば多分狂っていると思う様なことをやっているのだ。(真実)
で、15分経って、数種類のスイッチがOFFになった瞬間に「ロゴ」の画像が浮かんで来た。で、5分すると消えた。1時間後、パソコンのアプリを立ち上げて文字を並べてみると、さっきまで「形」になりそうなイメージはソプラノサックスが断末魔を迎えた様な雄叫びと共に消えた。(バニシングポイントだけがハッキリ見えた)
もう1時間後、MONSENという大判(B3)程度の書体見本(印刷されたアルファベットの清刷り)を倉庫から出す。言われた「言葉」が大きくて、読みやすいだけのパソコンのフォントでは反応しない。でほんのちょっとのズレみたいなことなんだけど大きなズレなので、古今亭志ん朝以上に慎重に書体を探す。(これは楽しい作業なのだ)
不思議なもので、選ぶ書体はほとんどの場合同じ様な反応を持って同じ書体を「やりくり出来そうだ」っていって選んでしまう。「これなら」で組んでみると、目の前で大きな音を立てて文字が組み上がる。さっきまでAとかBとかの単なるアルファベットが言葉になってくる、って程ではないということもない。ホント。
男のための男によるイベントだった構想は、既に広がりを見せて男女のくんずほずれずイベントになろうとしていた(らしい)で、オラの妄想は一瞬の儚さを持って、小さくしぼんだ。
問題はここからだ。「くんずほずれず」ではないが、先ほどの男=形=造形に、色を差すと、今までと違う風景が見えてきた。「オレはここは知らない」とブツブツ言うオレもオレ。一歩前に出てみてわかったのは、自分で作っている時ってーのは、何もわかっちゃいねえんだ、ってことよ。だから、ジェットラグだったんだぜ。