A Box From Boston

僕は数年前からハープの音楽に凝っていて、podcastの番組で知ったあるハープ奏者が気になって仕方なかった。その人は僕がそれまで聴いたことがないくらい美しい音楽を奏でていた。繊細で力強い。ハープはピアノと違って弦を直接弾き、弦の振動が直接身体に入ってくる。強さは実存的であり、優しさは「天国」そのもの。その演奏者は、想像では多分若い女性だろうと思った。番組の紹介する名前も日本人には発音できないような名前だった。調べたがデビューしていないし、CDも出ていなかった。が、演奏者の名前のフルネームを知り、サイトを発見した。イスラエルの女性ハーピストだった。それでサイトからカタログを知り、リンクしていた某世界最大業者にカードでCDを一枚注文したが、一向に来ない。友人は「遠いところだから2ヶ月くらいかかるんじゃない?」と言う。1月にシビレをきらし、某社にメールで(英語で)クレームをつけた。すぐに返事が来た。「注文から45日経っているのでキャンセル扱いです」だって!すでにカードの振り替えは済んでいる。頭に来たけど半分諦めていた。海外の友人から聞いた話では、マレーシア辺りの英語のわかる若者が代行で翻訳機使って返事をするらしい。なんか妙な英語でもあったし、やり取りが空振りな感じがあったので、クレームは3回で辞めた。で、息子が言うには「ミュージシャンのコンタクト(仕事窓口)で申し出してみたら?」で、考えた末、相談も兼ねてダメ元でメールしてみた。
何と翌日に、ハープ奏者から返事が来た。「あなたの音楽が好きで楽しみにしていたのに」を気にしていた。彼女は某社の受付状況を確認してくれ手落ちがあったので、自分から送る、と書いてあった。それから、2週間ほど経った今朝、CDの入った小包が届いた。欲しかったCDが2枚入っていた。送り元はボストンだった。彼女の本拠地はボストンだった。知った瞬間、クラシックのメッカの磁力が僕の中で走ったのを感じた。普段は、買ったCDはしばらく聴かない。1週間もそのままの時がある。聴くタイミングが大事なんだ。でも、このCDは箱にイロイロ押されたスタンプが面白かったので撮影してすぐに開けてCDをステレオ(普段はi-pod用Boseかなにかだが)で大きめの音で聴いた。僕の予想を遙かに超えた繊細な音楽は僕のすぐ目の前に迫ってきた。この音を独占したい気持ちになってしまった。こういう気分はレコード集めが始まってから初めての感覚だった。