12 angry men

元々は舞台(1954)だったという「12人の怒れる男」という名作映画(モノクロ/1957)を見た。前から友人に勧められてはいたけど、やっと見た。「脚本が面白ければ場面の変化はさほど問題でない」という代表的な作品で、主演のヘンリー・フォンダ(「イージーライダー」(1969)のピーター、「バーバレーラ」(1968)のジェーンの父)が制作に乗り出した作品で、ヒッチコックの超名作サスペンス「裏窓」(ビスタカラー/1954)の密室撮影(カメラがほとんど部屋の中)と同じ手法の映画。
「裏窓」の華やかさとドキドキではなく、会話と男達のポートレイト的な表現が美しい。
話も、少年犯罪を陪審員がどう評決するのか、陪審員の裁判との関わりという点でも今日の課題と興味深く関わっているテーマだ。いや、それ以上に照明や脚本と演技の関係において見るべきところが多く、一回見てあまりに面白いので続けて3回見てしまった。
以下は12人の陪審員。この12人がひとつの部屋にいる、というだけで想像力を触発する部分があると思う。
陪審員番号〜役柄〜(役者)
1番 陪審員長。進行役。フットボールのコーチ。(マーティン・バルサム
2番 小心モノの銀行員。(ジョン・フィードラー)
3番 高圧的な会社経営者。息子との確執がある。(リー・J・コッブ
4番 株式ブローカー。合理主義者で極めて冷静な性格。(E・G・マーシャル)
5番 工場労働者。スラム育ち。(ジャック・クラグマン)
6番 塗装工の労働者。老人に敬意を払う。(エドワード・ビンズ)
7番 セールスマン。大リーグ観戦に行きたくて時間ばかり気にしている。(ジャック・ウォーデン
8番 建築士。裁判自体に疑念を抱く。(ヘンリー・フォンダ
9番 老人。人情深く洞察力が鋭い。(ジョセフ・スィーニー)
10番 自動車修理工経営者。差別意識が強い。(エド・ベグリー)
11番 ユダヤ移民の時計屋。聡明な性格。(ジョージ・ヴォスコヴェック)
12番 広告代理店宣伝マン。軽いノンポリ。(ロバート・ウェーバー
アメリカではこの8番を「適当にやり過ごせない面倒くさい男」、「勇気ある正義感」という両方の代名詞になっているらしい。また、「なりたくない悪役ランキング」にも登場するらしい。これがニホンだと、評価が完全に偏ってひとつになるところ、ではないか。