13人

オウム裁判のニュースを見た。「ナニも解明されてない」という被害者の煮え湯の様な叫びに同時に諦めに似た「人の心の中の根源的な闇への恐怖」も感じる。普通の人が集団になり、その心理がある過剰な「塊」になるのは本当に怖い。学校の「いじめ」にも通ずるこの「闇」の正体は決して簡単に僕らの正面には現れない。

サリン事件」の4年前、雑誌の取材で富士宮サティアンに行った。表紙も含めた撮影に立ち会うためだ。ロケバスで編集者と2人で前日に下見して富士宮に泊まって、夕食の後ボーリングした。今考えると僕と編集者は「ボーリング・フォー・コロンバイン」みたいな二人だった。翌朝、ホテルで取材撮影スタッフと合流した。

ソンシの身体には沢山のゴキブリがついて歩き回っていたが、ひとりひとりは見ればごく普通だ。特別怖い感じはない。立ち会ったムライさんだって普通のオジサンだった。

撮影は、前日に下見した富士山の見える野原で。ソンシ一行はパープルのベンツでの移動だった。僕が持って行った風船を持って貰った。小型のボンベにヘリウムガスが入っていてそれで沢山の風船を膨らませた。空に浮かんだカラフルな風船を見ていると、さっきまでの一見普通な人達の様子が変わった様に思えた。青い空と平原の草のみどりと風船。この時の取材と撮影が逆説的な手法で行われ、当時理解されたモノが時代を経て変化してきている、と感じた。

知り合いのアパート経営者が昔「マツモトチヅオ」に部屋を貸していた、とか、死刑確定の13人の中にも元グラフィック・デザイナーがいるし、全然遠い国の話じゃないし、他人事じゃないんだよ、ね。