Atom Heart Mother’s Invention


このジャケットを知らない音楽好きは多分いないと思う。ジックリ聴いたことはなくともジャケットだけでも見たことはあるジャケの名作である。しかし更にジックリ見ていると、これは多分合成である。ポジ合成という複数のフィルム上を合せて作れる合成と思われる。当時は高度な技術者が多くいた。不思議な存在感は完成度の高い合成で生まれている感じがする。しかも、空は仕上がったプリントの上に水彩で色を足している。もしかしてポジ合成ではなくダイトランスファーという(合成の)手法かもしれない。/これは個人的見解というか予想だが、最初は裏ジャケの正面向いた3頭の写真がフロントカバーだったに違いない。後ろ向きの牛はどうしても裏にしか見えない。この「逆転」もしくは「ひねくれ」こそが、予想外の名作を生んだ原因かもしれない。これをイギリス的シュールリアリズムと呼びたい。/以上は技術的分析であり、日本的分析と思う。/こういったジャケットが出来る背景は、思想的デザインというより、(音楽同様真剣な姿勢で作っているから感じにくいが、)ユーモアのセンスに近いし、洒落とも近い。だから残念ながら日本では出来ない。真似も難しいからやらないほうが良い。