18_Depeche Mode
ジャケットというより音楽のグラフィックで写真と言えばオランダ人カメラマン、アントン・コービンは有名で、会った時も世界中からオファーが来るから「事務的に対処しているけど、音楽を聴いていいな、と思うと予算はなくても引き受けてしまう」って言ってた。彼の事務所で作品を沢山見たけど、それでもほとんど作品は知っているものばかりだった。同じ年齢だし、距離は違えど「憧れのロンドン」の気持ちは同じだったし、第一、「見てきたもの」「聴いてきたもの」が、ほとんど同じ。
彼は無類の「モンティー・パイソン好き」で酔うと必ずやるという「シリー・ウォーク」(モンティーの持ちネタで妙な歩き方の役人の歩き方。これは日本人にもわかる芸か。)をボクも一度見た事がある。2m近くある大きなアントンがロンドンの街で見せた普通の男の子に戻った一瞬だった。
彼の車の中にあったのが、U2の別ユニット「Passengers」と並んで「Depeche Mode」があったのを思い出し、今回はチョイスした次第。



「メンバーと同じ目線」というより「同じ企画者」的な「強かさ」を感じる写真だ。ロンドン出身じゃないからアクセントの突き出しが強いのが特徴で、自然体でありながら強いから印象に残る。ニック・ナイトと違ってファッションではなく音楽を撮る写真に徹している。その真剣さと発する熱意がミュージシャンをその気にさせる。撮影は案外簡単だ。1カット12枚撮れるブローニも5-6枚撮って終了。数分だ。上手くいった場合なんだろうけど、普通に撮って、時間をかけてセレクトし、ニック・ナイトと同じプリンターで処理していた。(欧米では通常カメラマンはプリントしない)家にも彼の写真があるが、簡単な様で難しいというかハードルが高いというか、簡単には真似出来ない写真だ。


しかし、Depeche Modeとの仕事はプロっぽい。ヨーロッパのエンタメ事情を把握したグラフィックのディレクションを感じさせる。

こういう写真も撮るんだから、ボクが思うにカメラマンというより写真を主体にしたディレクションの人なので、何でも出来るんだろうなあ。最近は映画監督だし。音楽が好きでロンドンに出て来た時の事を思って、今でも熱くなる人だと思う。