イギリスのローカルバンド時代

キング・クリムゾンはロンドンから少し離れたドーセットという街から出てきた。都内との距離で言えばあの有名なブライトン(映画「さらば青春の光」の舞台で湘南みたいな所)から推測すると、小田原くらいか。この距離は音楽に限らず、モノ作りには大きく影響する。エネルギーに溢れた若い男達が、先にど真ん中で活躍している奴らに「一泡吹かせたい」と思わないわけがない。というのは、キング・クリムゾンの大いなる野望が爆発したデビューアルバムが超大ヒットしてロックがグッと幅広くなった幕開け。というのも大袈裟ではないのだが、そのデビュー前のノビノビ時代の音には面白い事がイッパイ詰まってる。
その大ヒットアルバム(業界の定説では「アビーロード」をけ落として1位になった説ではなく現在では「実は7位だった」説が有力。68年だかなのでどっちでもOKですよ。)の主要メンバー2人のマイケルとロバート、それにデビューアルバムに参加しなかったマイケルの弟ピーターとのトリオのアルバムである。「The Cheerful Insanity Of Giles, Giles And Fripp」というアルバム(1968/図版)。はっきり言って完全ローカルなテースト。でもドーセットの街の雰囲気までパッケージされている感じもある。でもでも音楽的にはすでにこの時点で並々ならぬ才気が爆発している。聴けるのは、クリムゾンの幽玄で緻密な世界ではなく、仲間と練りに練った未知の音楽と、仲間内のギャグがまぶされている。ナント!A面では曲の間に「The Saga Of Rodney Toady」というロドニーの話が度々出てくる、B面では言葉遊びみたいなナンセンスギャグか?「ジョージってのはオレの知っているヤツの名前〜オレの知っている名前はジョージ」という回文みたいな掛け合い漫才が曲の始まる前に繰り返す。(「Just George」)今じゃ世界どこに行っても「すべるギャグ」なのだが、モンティーパイソンみたいに「喋ることが面白い」なのか?今になってはちょっとわからないのが残念。
元々ジョン・レノンもロンドンの友達の「ボンゾ・ドッグ」〜「モンティーパイソン」などのナンセンスなモノを参考にしたと聞くし日本で近いのは、YMOスネークマンショーのコラボ「増殖」(1980)か?奴らが早く発明したわけではなく、録音芸術以前からある伝統芸にちかい「渋い」感じなのではないか。
今にジョン・レノンのユーモアも介さない時代が、、イヤ既に来ている。今の小学生にはわかるまいなあ。