イトトンボ

夏休みと言うとすぐに思い浮かぶのは「昆虫採集」。品川の家の周りにはカブトムシなんかは見たことのある人もカブトムシくらい珍しかったので、紋白蝶にシジミ蝶しか採集箱には入れられなかった。一番好きだったのは「糸トンボ」。カゲロウに似てても元気ない。陰の社会を生きてきたような薄い存在感。昆虫採集に向いてもいない。そういう感じが好きだった。カブトムシを自慢するのは、将来政治家になりたいと発言するのと同じで、僕には間抜けな権威の象徴だった。「糸トンボ」や「蛍」が好きというのは、ある種の理想主義者なのかとも思う。きっとフェラ・クティも同じ意見だと思う。